正常な睡眠と高齢者睡眠障害

目次

・正常睡眠 

・概日リズムについて(サーカディアンリズム

・高齢者の睡眠変化

・加齢における日内リズムの変化

・高齢者が不眠に陥る要因5つ

・施設で実践、非薬物治療

 

正常な睡眠

【REM睡眠】

特徴:低振幅の様々な周波数の波が存在する

   NREM睡眠の段階2・3の中間に相当

   覚醒閾値(目覚めるのに必要な刺激強度)は高い

   急速眼球運動の出現

   骨格筋は弛緩状態(おとがい筋も弛緩)

【NREM睡眠】

特徴:徐波が出現する、深いNREM睡眠になるほど高振幅の徐波になる

   段階1~段階4まで存在し、段階3・4は深睡眠とも呼ばれる

   骨格筋は軽度緊張状態

 「point」

・REM睡眠とNREM睡眠は90~120分の周期で交代する

・通常、REM睡眠はNREM睡眠が60~90分持続した後に初めて出現する。

・深いNREM睡眠は前半、REM睡眠は後半に大量に出現する。

 

ヒトの概日リズム

・人は1日のリズムを24時間に同調させ生活している

・最も安定した指標は深部体温、

→実験では時間の手がかりがない環境でも24.5~25時間の周期を保持できる

 

加齢による睡眠変化

 

高齢者

若者

臥床時間

9時間以上

約3時間

睡眠時間

約6時間

7~8時間

睡眠効率

70~80%

85%以上

 

NREM睡眠(3・4)減少

 

 

 

加齢による日内リズム変化

・高齢者では寝床に入る時間・起床時間がともに早くなる

 →概日リズム(深部体温)の位相の前進による

・概日リズムの幅も低下する。

 →夜間の浅い眠りや昼間も居眠りや眠気が生じやすくなっている

メラトニンの分泌量は著明に低下を認める

 →昼間の光暴露量が少ないことが原因の可能性が高く、

  高齢者に昼間の光を浴びさせることで、睡眠効率改善・メラトニン増加を認める

 

高齢者の不眠の要因

①身体的要因:疼痛、頻尿、痒み、咳、呼吸困難

②生理的反応:騒音、光、不快温度、環境変化(旅行先・施設)

③薬理学的要因:薬物・酒・たばこ

④心理学的要因:ストレス・緊張

精神障害うつ病統合失調症、不安性障害

 

原発性不眠

①眠りに関する過剰なこだわり

 眠ろうと努力して覚醒を上げてしまうことや眠れいない不安を抱え覚醒を上げることが悪循環を生んでいる。

②不適切な不眠衛生

 眠ろうとして早い時刻にベッドへ横になるが、入眠時刻の2~3時間前は最も覚醒が上がる時間であり、入眠が難しい時間。また、「寝床に入ると目が覚める」という条件反射が形成される可能性が高く、さらに眠れなくなる可能性が高い!

 不眠による疲労や消耗を昼間に代償しようとして活動量を抑えるのも睡眠に悪影響を与える

 

非薬物治療

①昼間の十分な光暴露

②適度な運動

③寝る前の入浴

④午後1∼3時の20分程度の昼寝

 

参考文献

高齢者の睡眠障害   清水 撤男