睡眠と学習

睡眠と学習について

目次

・はじめに

・睡眠効果

・睡眠実験(記憶固定)

 

 

はじめに

記憶固定は「覚醒状態で符号化された新しく、かつ、不安定な記憶表現を既存の長期記憶に組み込まれた安定した表現へと変換する過程」と考えられる。

そのため、記憶が最初に符号化された際に同じ神経ネットワーク内における再処理が必要である。

しかし、覚醒中に実施した場合(想起手掛かりなしに)、幻覚との区別が困難になる。例えば、歴史の勉強をした後、英語の勉強をしている際に何の前触れなく歴史の知識が頭を駆け巡ったら、混乱してしまいます。

これを回避するために、新たな情報は高い柔軟性を持った貯蔵部位(海馬を想定)に一時的に貯蔵し、その後、既存の体系に馴染むように時間をかけて組み込む必要がある

睡眠の効果

①記憶の増強

これは、学習後に睡眠をとると、陳述記憶では想起(記憶を思い出す)の改善、非陳述記憶ではスキルの速さ・精度の改善を認める

【陳述記憶】では想起できるアイテム(記憶など)が増えるというより、忘れるアイテムが減るという考えが正しいかもしれません。

【非陳述記憶】は、睡眠をとる群ととらない群では、睡眠をとる群の方がスキルの改善を認める。また、同一被験者でも、睡眠前後で比較しスキルの改善を認めます。

②干渉に対する抵抗性の増加

これは、新たに符号化された記憶表現が安定化しやすい。

【陳述記憶】では、記憶想起の低下が少ない。例えば、歴史の問題を解いている際に、「この革命って1875年だっけなー?」という情報と「1880年だったような...」という情報で迷うことありますよね。正解な情報に対して多数の情報が干渉(混同)してしまう現象はよく見ます。記憶表現が安定しやすいとは、こういった際に、記憶の安定しているため、迷わずに解答できるようになれるということです。

【非陳述記憶】では、競合情報によるパフォーマンスの低下が少ない

 

睡眠実験(記憶固定)

【陳述記憶の固定】

20個の単語リスト3セット(A~C)を使用

例:Aセットの単語を示しそれと対になるBセットを解答する

被験者(睡眠・無干渉群、睡眠・干渉群、覚醒・干渉群、覚醒・無干渉群)

方法:Aセット・Bセットの勉強→→睡眠or覚醒

→→テスト・干渉群はテスト直前にAセットとCセットを学習(情報の干渉)

結果:睡眠・干渉群の想起成績低下は覚醒・干渉群と比較し軽度

 

【睡眠ステージと記憶固定】

方法:① 就寝前の学習→ノンレム睡眠(睡眠前半)→覚醒・テスト

   ② ノンレム睡眠→覚醒・学習→レム睡眠(睡眠後半)→覚醒・テスト

結果:ノンレム睡眠は陳述記憶の固定、レム睡眠は手続き記憶の固定に促進効果あり

 

 

説①:睡眠の記憶固定促進効果は徐派睡眠とレム睡眠の両方が必要

   →手続き記憶の成績改善は、最初の4分の1の徐派睡眠量と最後の4分の1のレム睡眠量の両方に相関する

 

説②:記憶固定は徐派睡眠とレム睡眠からなる自然サイクルが重要

→サイクルが崩れやすい高齢者では、睡眠後の単語対想起の程度と規則正しい睡眠サイクルの量と有意な正の相関を認める

中途覚醒させず連続した睡眠をとる群とレム睡眠10分後覚醒(15分)させる群では、ノンレム睡眠レム睡眠の総合計時間が変わらないが、単語対テストの成績に差がでる

 

睡眠による記憶表現の再組織化

睡眠は、新たに符号化された情報表現を再組織化し、新たな連合を形成し、普遍的な特徴を抽出する

被験者:睡眠群、昼間覚醒群、夜間覚醒群

方法:決められた計算ルールで解答する認知課題を行う  

※この課題には規則があり、気づけばすぐ解ける

 →実は答えが2の段の順になっている、実は曜日順になっているなど

結果:昼間・夜間覚醒群は2割しか気づかなかった、睡眠群は6割

 

 

参考文献

睡眠と記憶固定 田村 了以