失調症状の種類とアプローチ
目次
・失調症状の特徴
・運動失調の種類
・アプローチ
【失調症状の特徴】
①その症状が動作の場面でより顕著に出現する
②四肢と体幹が過大でかつ粗大に動くこと
③環境や動作の場面の違いにより症状が異なる
④失調症の種類により特有の症状が出現する
【運動失調の種類】
①小脳性運動失調
障害部位によって症状が異なる
1)小脳半球
役割:上下肢の運動の協調に関与し、
症状:測定異常、測定過多、運動の分解、反復拮抗運動不能、筋緊張低下、眼振、
時間測定異常を認める
2)上部虫部
役割:歩行の協調性に関与
症状:歩行は失調性でワイドベース、上肢を広げ、歩行リズムも崩れる
3)下部虫部
役割:体幹運動の協調や平衡機能に関与
症状:立位で前後上下にがくがくと動揺、座位保持困難な場合もあり
酩酊用歩行や断綴製言語、を認める
4)片葉小節
役割:前庭系を通じて眼球運動の協調に関与
症状:前庭眼反射異常、眼振、滑動性眼球運動の異常、衝動性眼球運動の異常
眼球測定異常を認める
②迷路性(前庭性)運動失調
特徴:前庭系(頭の傾き・回転等の運動)の障害
平衡機能の障害、体位変換時における反射的運動の障害、体幹失調
閉眼後に次第に動揺が大きくなる
患側への偏倚が著明で、転倒も患側に多い、両側性は編倚なし
③脊髄性運動失調
特徴:深部感覚(筋・腱・関節感覚)の障害による。
静止・運動時に四肢(特に下肢)の運動失調・動揺を認める
閉眼では明らかに動揺が増強する
倒れる方向がバラバラで注意が必要
④大脳性運動失調
特徴:主な病変は前頭葉と言われている。小脳性運動失調と似ている
頭頂葉病変でも運動失調が生じると言われている
感覚性(位置)運動失調を認める
⑤その他
末梢神経障害、糖尿病性神経障害、アルコール性、血液循環障害
【アプローチ】
【運動療法】
課題:体幹下部の動作時の安定性を得ることが重要
治療:①体の重みを利用する
②セラピストが持続的な圧(圧力やその部分をつかむ)を加え筋活動を高める
例)立位で肩・骨盤から下肢に向かって圧を加える
注意:治療姿勢は患者様ごとに選択することが重要
中枢が安定してきたら、次第に遠位部に治療ポイントを移していき、
①大きく活動性のある動作(歩行・階段・ADL)と②巧緻動作を実施する
【小脳性運動失調の運動療法】
・概要
実際の姿勢・動作に沿って、患者様自身が自分の中で運動プログラムの作成を行うことが出来るように支援する
・注意点
視覚の利用は、気分不快になる場合は、あくまで自然に利用する程度にとどめる。
抗重力位になるほど、視覚・体性感覚系の情報処理が不十分となり不安定となりやすいため注意。また、外部入力の障害が大きいため、過剰な声掛け・大声は混乱させる可能性がある
【迷路性運動失調の運動療法】
・概要
視覚情報を積極的に利用し、体性感覚と前庭感覚を一致させることが重要
動揺が起こらない動作を選択する。より随意運動を促す
例)タンデム歩行時、最初は視覚を使用し徐々に視覚情報を減らし
なるべく動揺・代償が起きないように治療する
【脊髄性運動失調の運動療法】
・概要
体重を利用し圧覚など誘導し、動作の認知を行うこと。
抗重力運動を積極的に実施。最初は視覚情報を利用し、徐々に体性感覚にシフトする
【大脳性運動失調の運動療法】
病態・症状に合わせて治療する。
高次脳や筋緊張などの影響が多い
参考文献
失調症患者における問題点予測