脳卒中片麻痺の視覚・聴覚・体性感覚
目次
・3つのポイント
・姿勢制御
・視覚機能
・聴覚機能
・体性感覚
【3つのポイント】
気づき:情報にアクセスする
手がかり:問題解決の糸口
探索:試行錯誤・解決しようとする行動
気づき・手がかり・探索で得られた動作を学習し、フィードフォワード機構として日常生活に利用できるためには、一時記憶かた長期記憶化へと進めなければならない。
長期記憶化は同じ動作を繰り返しがすべて良いわけではない。
新たな手がかりを求めて探索する過程には、必ず以前の動作や手がかりを使用しているため、新しいことに順応する機会を与えましょう。
→意識下で行われるフィードバック機構から無意識下のなかで行われるフィードフォワード機構に変換できるように工夫が大切
【姿勢制御について】
・神経系要素
①全身の筋を神経系の共同収縮系に組織化する運動処理過程
②視覚系、前庭系、体性感覚系の組織化と統合からなる感覚/知覚過程
③活動へ感覚をマッピングして姿勢制御に対する予測と適応の側面を確実にする高処理過程
・姿勢制御と運動制御は
①個人の能力(行為・知覚・認知) ②遂行すべき課題 ③環境的要因 により決定
知覚は、末梢の感覚機構と中枢神経系の処理機構を含み、外界の状態を解釈し、意味づけすることと関係している。
認知は、意図や目標を達成するための運動制御における注意、動機、情動と関係している。
つまり、動作課題はその課題の質だけでなく、その課題に直面する人の情動に対する反応までも制御している。ちょっとした不安や不快などの情動面の変化においても動作の円滑さを妨げる可能性がある。
【視覚機能】
・実験内容
A:前方のペットボトルの先を触れる
B:前方のペットボトルは見えているが、体からペットボトルまでの間は覆われて見えていない状況で触れる
→円滑さが低下
・解説
1)目標物を視覚で捉えるために
第一機構、近傍周辺視にある目標物を視覚補足する能力を備えた下位機構であり、
主に眼の運動が必要であり、頭の動きは少ない
第二機構、第一からさらに外にある目標物の所在をみつけるもので、眼-頭運動の組み合わせを制御する
第三機構、周辺視の最も外側にある目標物の所在を見つけるもので、眼-頭と体幹を一体として制御する
つまり、視覚系はあらゆる運動行動に先行して、①姿勢反応の構えを準備②あらゆるシステムとの自律的な協調関係のなかで機能している。
2)目標物を手で捉えるために
到達機能と把持機能がある
到達機能は、操作形体に合わせて変化する手の形状づけが一連の動作に含まれている。
そのため、手の形状づけの過程と上肢到達運動を一連の動作プロセスとして実施することが重要。
・臨床
輪投げリーチ練習
①決められた輪投げの位置に対して
はじめは、視覚を用いて頭ー体幹の協調性とともに実施する
②輪投げの取る位置と投げる位置が変更→周辺視を用いるよう外側から輪投げを動かす
動いている輪投げを捕捉と同時に把持する
新たな目標点に入れる
②は常に眼ー頭ー体幹の協調性のアプローチとなる
【聴覚機能】
・実験
A:起立と着座を実施する
B:起立後に椅子を引く音を立てる
→動作がゆっくりになる、大腿で椅子を確認しようと体幹前傾が増加
・解説
聴覚刺激により情動面に変化を与えている
気づき:椅子がないかもしれない
手がかり:椅子の端の存在
探索:大腿で椅子に触れる
・臨床
音を用いて気づきや手がかりを与え、探索させるアプローチ
【体性感覚】
・実験
A:ベッド中央で端座位をとり左右への体重移動
B:ベッド端で端座位をとり左右への体重移動
→立ち直り減少する
・解説
重心移動する際に、大腿外側・座面に充分な接触がないこと
座位の位置が、外乱に対して充分な座位保持が出来ないという情動面
・臨床
環境設定を大切に意識する
【症例】
・実験
1回目:上肢挙上
2回目:体重移動2分後に上肢挙上→1回目より良好
・解説
体重移動による座面の把握
位置関係が十分に把握でき円滑な体幹の活動性を引き出す
骨盤コントロールによる下部体幹の賦活により、上肢筋(広背筋)上肢挙上に優位に働きやすくなった。
・臨床
患者の能力を引き出すために理解を深めよう
セラピストのタイミング・リズムを無意識に優先している場合が多い
参考文献