慢性痛と理学療法

目次

①慢性疼痛とは

②脳での痛み認知

③痛み治療(急性痛・慢性痛のリハビリ)

 

①慢性痛とは

  • 組織の損傷や炎症が治癒しきれず、痛みが持続する【急性痛が長引いたもの】

  例:リウマチ、変形性関節症

  • 慢性痛症

  例:骨折・筋損傷が治癒したが、痛みが持続している

    環境により装飾を受けたり、自律機能・気分障害など全身機能に影響を与える

 

神経損傷時

【強い痛みが持続することで痛み系の神経回路に生じた歪み、すなわち可逆的変化によって慢性痛症が生じる】

神経損傷後に交感神経系や非侵害性体性感覚神経が痛み系とコネクションを持つようになる

温度・触覚などの体性感覚刺激や自律神経系、精神・心理系など様々な刺激に過剰反応するようになる。

触ったら痛いのだろう、、、 

雨だな、冬で寒いな、、、

これらの刺激だけでも痛みを捉えてしまうようになる可能性が高い。

これは、痛み系は分化度が非常に低く、自由度が高い自由神経終末だからと予想

筋・骨損傷時

慢性痛について複合性局所疼痛症候群CRPS を総称を提唱している

【CRPS】

  • 組織または神経の損傷により発症
  • 損傷の程度に比べ、強い持続痛・疼痛過敏現象
  • 末梢神経・脊髄・脳幹・視床・大脳皮質における

    ニューロンのsensitization remodeling(神経回路再構築)

  • Emotional distress 精神的苦痛

【CRPS type1】

組織損傷がもとで誘発される痛み

損傷部から離れた広い範囲にまで症状が及ぶことが多い

【CRPS type2】

末梢神経損傷による、損傷神経の支配領域に惹起される痛み

 

②脳での痛みの認知

【健常者】

侵害刺激→視床・島・前帯状回・大脳皮質感覚野などが活動

【慢性痛症患者】

侵害刺激→強い痛みを感じているが、視床の活動を認めない

     前頭葉・前帯状回・大脳皮質感覚野が活動

 

つまり、慢性痛症患者では、脳内での痛み経験を積み重ねることで、中枢神経系に可逆的変化を引き起こしている可能性がある

 

③痛みの治療

  1)急性痛と慢性痛症の鑑別

  2)認知行動療法理学療法

1)急性痛と慢性痛症の鑑別

急性痛の時点で、治療することが一番重要

治療方法が全く異なるため、鑑別を大切に

 

 

2)認知行動療法とリハビリ 

【重要】

患者の主訴を聞いて、ニーズに合わせた目標設定

患者が積極的にリハビリに参加するとともに、日常での行動・生活を変革させていく

【悪化】

患者が受け身となる治療は①医療者に対する依存や②痛みに注目しやすくなる、ことから

痛み中心の生活になっていく可能性が大きい

慢性痛は心理・社会学的問題を含むことが多いため、受け身となっている治療は解決せず、悪化を引き起こす可能性が高いと言える。

 【具体例

運動による慢性痛の軽減の可能性は高く言われている

不活動や術後の固定・不動では、痛覚過敏生じることも多く、また、軸索流動の中断・低下による神経インパルスの低下、神経栄養因子の合成・分泌が変化し神経障害を惹起する可能性がある。

運動量・活動量が低下することにより、うつ傾向や筋パフォーマンスが低下し悪循環に陥る可能性も高い。

【重要】

  • 筋活動を中断しない
  • 固定・安静は危険

固定・不動では、痛覚過敏や神経障害を惹起する可能性あり

そのために

例:麻痺などで自動運動ができない

   →電気刺激を用いて筋収縮を誘発

  固定や痛み部位の筋収縮・運動が不可能

   →同じ神経支配と分節の疼痛部位周辺や対側の同部位での運動・刺激入力

 

工夫した理学療法を実施するとともに

日々の慢性痛にも打ち勝てる心を再構築するため、認知行動療法を併用する