疾患別疼痛メカニズム 理学療法

痛みのメカニズムと理学療法~運動器の痛み~

目次 

  • 運動器とは
  • 疼痛の捉え方
  • 筋や関節の侵害受容線維

  •  

    疾患別の疼痛 

 

運動器とは

身体活動を担う組織・器官の総称

→筋・腱・靭帯・骨・関節及びそれらを支配する神経・血管系も含まれる

 

疼痛の捉え方

【過去】

  • 運動器痛みは動作に伴って生じることが多い
  • 骨の変形・アライメントが痛みの原因に大きく影響している

【現在】

  骨・関節疾患には筋・神経など包括的に考察する必要あり

筋や関節の侵害受容線維

運動器を支配する感覚神経の多くがポリモーダル受容線維である

そのため、運動器の痛みはPG・SP・CGRPなど神経ペプチドの影響を強く受ける

二次ニューロンは複数の筋肉・関節・皮膚より入力を受け、一本の神経で伝えている。

→つまり痛みが発生しても部位を限局して示すのは難しい

  • 痛みを訴える部位の局在性に欠ける
  • 関連痛が生じる可能性が高い

患者が「関節が痛い」と訴えても周囲の筋肉が原因の可能性あり

筋肉も関節も同じ神経で伝達するため、判別しにくい 

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組織損傷時の体の働き

組織が損傷されると、組織から分泌される炎症メディエーターの作用によって血管拡張・血管透過性亢進が生じる。

そのため、①発熱・発赤・腫脹の出現、②侵害受容線維の興奮による疼痛発生

③炎症反応の出現侵害受容線維の興奮→中枢・末梢の両軸索末端から神経ペプチド放出→神経性炎症

神経性炎症は、軸索反射以外に脊髄を介した後根反射の影響を受けるため、反対側にも影響を与える。

疾患別の疼痛 

①股関節

患者が訴える痛みとして

  • 急性期の病態によるもの
  • それに関連した領域に拡大しているもの

Khan らは 股関節疾患患者の47%に股関節由来と考えられる膝から遠位への放散痛がある

股関節の支配神経分節はL2~S2であり、股関節病変に伴う関連痛も広範囲に及ぶことがある

<重要>

股関節疾患に対して、股関節に限局しないこと

          腰部~下肢の広範囲な領域アプローチを考えること

 

椎間板ヘルニア

【原因】

  • 椎間板の線維輪が弱くなって膨隆し神経圧迫、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出し神経圧迫
  • 圧迫に伴う神経周囲の炎症、遊離される炎症メディエーターによる痛みの誘発

【対策】

除圧術だけでなく、循環改善が重要か

【リハビリ】

神経根圧迫状態では、化学物質(インターロイキンなど)の増加が影響していることもあり、これらの物質を軽減させるために、理学療法が効果的な可能性もあり

 

③筋痛

【現状】

腰痛・肩こり → 湿布やマッサージなどで対応している

【原因】

トリガーポイント(TP)部の筋肉は持続的な筋収縮を起こしやすい

循環障害が起こりやすく、アデノシンミリン酸(ATP)供給が不十分

筋弛緩が出来なくなり、筋収縮が持続してしまう。

筋の持続的収縮は、筋を硬化、筋内毛細血管を圧迫し虚血となり、発痛物質を産生する